Play The Game

【注意書き】

・END1または2を迎えた後の2人
・たぶん半同棲してる
・本編ネタバレあり
・かっこいいチアキは不在です(構って欲しがりなチアキはいます

 

Play The Game

 

 

彼女のやってるソーシャルゲームで大幅アップデートがあったらしい。

「わー、UI丸ごと入れ替わってる。んーと、これがこうで、日課はこっちからか。
やる事同じだけどほぼ別ゲーみたくなっちゃった」

「別ゲー?」

「ああ、違うゲームみたいって事。今回のアプデ、前々から予告されてはいたんだけどね。
すっごい変わりようで驚いてるよ」

「そうなんだ」

「うん。とりあえず、日課回すかなー」

話しかければ返答は返ってくるんだけど、彼女は刷新されたゲームに夢中だ。
タブレットを手放す気はなさそうな様子に、心の中で溜息を吐いた。

読書家で、音楽のライブに行くのが好きで、ゲームが好き。映画にも観劇にも興味有り。
島にいたころは、こんなに多趣味だって知らなかった。
彼女の色んな顔を知れるのはいいんだけど、弊害もある。

(何かに夢中になると、構ってくれなくなるんだよな)

つい、じとりとした視線を彼女に向けてしまう。
こっちを見て欲しくて。

「どうしたの、チアキ」

視線に気づいた彼女が俺に問いかける。

「いや、君の気を引きたかっただけだよ」

「ストレートだね、珍しい」

「君が言ったんじゃないか、何かに没頭しすぎてたら構ってほしいって意思表示してくれって」

「あはは、そうだったね。今日はまだ没頭してないよー」

「そうかな……没頭しかけてるように見えたけど?」

「ごめんって」

クスクス笑った彼女がタブレットをテーブルに置いて、指を絡めてきた。

「それで?」

「ん?」

「チアキはどう構って欲しいのか、言ってみて?」

首を傾げた彼女が、無邪気そうに告げる。
彼女はこういうところがある。
悪気なく、気恥ずかしい事を言わせようとするというか。

「30分。膝枕してほしい。そうしたら30分は放置されても我慢するから」

「そんなのでいいの?全然、いいよ」

(あっ、しまった!もっと要求しても良かったのか……)

ちょっと後悔しかけたけど、彼女が太腿をポンポンと叩いて促してきたので、その誘惑に抗いきれずそっと頭を預けた。

(温かくて、柔らかい。今日も、いい匂いがする)

時々してもらってるから、心地よさはよく知ってるんだけど。
いつしてもらっても嬉しくなる。
加えて、いつも彼女がしてくれる事があって。今日も期待してる俺がいる。

「柔らかいよね、チアキの髪。好きだなあ」

「ん……」

さらり、さらりと彼女の手が俺の髪を撫でてくれる。
ここにいる事が赦されてるような、彼女こそが俺の居場所だっていう感じがして、この時間が好きだ。

(君が好きなのは、俺の髪だけ?違うだろ?)

なんて、ちょっと茶化して彼女をからかいたいのに、眠気が訪れた。

「髪、だけ……?」

「違うよ。チアキの全部、好きだよ。安心して?」

辛うじて紡いだ言葉に、望んだ以上のレスポンスが返ってきて、ふにゃりと口元がゆるんだ。
そこから先の意識は曖昧だ。

「おやすみ、チアキ」

微かに聞こえた気がする、彼女の声と髪を撫でる手の温度がとても心地よかった。

本当は、うたた寝じゃなく、起きたまま膝枕を堪能したかったんだけど。
『ごめんチアキ、脚痺れちゃった』
と遠慮がちに肩を叩かれ起こされるまでの小一時間、彼女を独り占めできたから良しとしよう。