SCARLET

【注意書き】

・END1または2を迎えた後の2人
・たぶん半同棲してる
:本編ネタバレあり
・セクシャルな描写あり(行為の描写は回想にちらっと程度)
・ほぼ女攻め描写ばかり(苦手な人は逃げてください)
・設定ふんわり

 

SCARLET

 

透明感のある、赤いシロップに浸したような爪が、目の前でひらめく。
ついさっき俺の唇にチョコレートを一粒餌付けした彼女の指先には、
甘い匂いが移り香になって残っていて、どうしようもなく誘われる。

夕食の後、彼女が新作だというチョコレートを幸せそうに食べていた。
味見したいと言った俺に、手ずから食べさせてくれたのがついさっきの事。
チョコレートはもちろん美味かったんだけど、それ以上に綺麗に整えられた爪と、一瞬俺の唇に触れた指の感触の方が欲を誘う。

「チアキ?まだ食べたいの?」

「……うん」

指先を凝視する俺を不思議そうに見つめた彼女の問いに、上の空で返して手首を掴んで引き寄せる。
え、と驚いた声を上げる彼女にかまわず、その指に舌を伸ばした。

ちゅ、ちゅく。

ピチャ、ぢゅぅ、ちゅぷんっ。

はしたない水音が、やけにリビングに響く。
舌を這わせ、吸い付き、口に含み、舐めしゃぶった彼女の指は、とても甘く感じた。
舌で触れた瞬間だけ肩をぴくりと震わせた彼女は、特に咎めもせずに俺のする事を受け入れてるようだ。
それに気を良くして、人差し指と中指をまとめて口の中に含み、指の付け根も舌でまさぐりながら吸い立てた。

かたい爪の感触が、舌の奥を掠める。
ジェルネイルという装飾を施された彼女の爪は、いつも綺麗だ。
一定のサイクルでデザインを変えるそれは、確か水分で浮いたり剥がれる可能性があったはずで、こんなふうに口の中で唾液にまみれさせるのは本当は良くないんだろう。
だけど、今の俺は興奮してしまってやめられそうにない。

くるりと、彼女が手のひらを上向きにした。

「んぅっ……?!」

だけでなく、上向きになった中指が俺の口蓋をすり、と優しく撫でたのだ。

――ゾクリ。

背筋が甘美な快感に震えた。

彼女とこうなるまで知らなかったけど、俺はこの撫でられた部分が弱いらしい。
……スイッチの入った彼女からキスの主導権を奪われると、かなり早く陥落してしまうくらいに。

「んんんっっ!」

「そんなに、おいしい?」

密やかな声が、吐息と共に俺の耳に吹き込まれて身震いする。
ほんの少し前まで和やかに夕食をともにしていたリビング。
ロケーションは同じなのに雰囲気は一転して、睦言の気配がゆるやかに充ちていく。

「……んぅ、ん」

先程の問いかけに、口内に彼女の指を含んだままではうまく発音できず、くぐもった声を漏らしながら目線で頷くのが精一杯だ。

「そう。ねえ、すごい事になってる」

含み笑った彼女の視線が、俺の下肢に向けられた。
ボトムスの前立を、屹立が窮屈そうに押し上げてる。

「チョコレートって昔、媚薬だったんだってね。そのせいかなあ」

「っあ、」

「違う?私の指のせい?」

ちゅぽん、と口から彼女の指が抜き取られる。
俺の口端と彼女の指先を繋ぐ銀糸がとろりと垂れて、途切れた。

(とりあげないで、くれ)

夢中で味わっていたものを不意に取り上げられて、つい恨みがましく彼女を睨んでしまう。

「ごめんね?そろそろくすぐったくて」

ふふ、とおかしげに笑う彼女の眼にある色が浮かぶ。
俺にある種の”意地悪”をして、愉しむ時のそれだ。

「ねえチアキ。どうしたい?」

いっそ無邪気な雰囲気さえ発しながら、彼女が首を傾げた。

「……意地が悪いな、君は」

「いきなりこんな事されたんだもん、お返しだよ」

鼻先に、てらてらと俺の唾液で濡れそぼる指を突き出されて、ぐうの音も出なかった。

「……そういう君に」

「うん?」

「もっと。好きにされたい」

「いいよ」

承諾と共に、ヌルリと濡れた指が俺の口内に侵入してきた。

「じゃあ、もっとちゃんと舐めて?」

耳朶を甘噛みするちりっとした感触が走り、低く蕩けた彼女の声がそう告げた。
語尾は疑問形を取っているが、実質は”命じる”に近い声音だ。

頭の芯がジンと痺れる。

もう、余計な事は考えられない。

君のその指先と、艶めく声、猥雑な手管に、今夜も翻弄されて溺れていく。