【注意書き】
・END1または2を迎えた後の2人
・たぶん半同棲してる
・色々ネタバレ有(テレフォンや差し入れ、エンドレスモードでのやりとり含む)
・セクシャルな仄めかし僅かに有
・設定ふんわり
――甘い。
ぺろり、と己の唇を舌先で辿ってかすかな甘さを味わう。
彼女の滑らかなうなじに手を添えて引き寄せると、手の甲をサラサラと髪が撫でた。
ちゅ、ちゅ、と角度を変えてしっとりした唇を何度か啄む。
柔らかい。
甘い。あまい。
やめられない。
「……ねえ、塗ったのに取れちゃう」
彼女の指が俺の肩にかかって、やんわりと続きを阻まれた。
「ごめん、つい」
「もう」
怒りよりもやや呆れを孕んだ表情で、彼女は俺の胸をトン、と押して身体を離した。
そのまま踵を返して、テーブルの上のメイクボックスを開いて何やら物色してる。
スキンケアの一環で、彼女が唇に塗るそれ。
リップスクラブというものらしい。
最初にそれを知ったのは、スクラブを使用後のツヤツヤした唇にそれとは知らずに
引き寄せられて思わずキスした時。
商品名にシュガースクラブと謳っているだけあって、キスした唇はほんのりと甘かった。
艶めいてしっとりした、文字通り甘い唇を味わうのが楽しくて、
それから何度となく今日みたいなやりとりをしてる。
せっかく施したスクラブが剥がれて塗り直しになってしまうので、
彼女には呆れられたり叱られたりするが、どうしてもやめられない。
腕の中からぬくもりが離れてしまったのが不満で、彼女の後を追い背中から抱きしめた。
「どうしたの、チアキ。なんだか今日、甘えてる?」
「前に、たまには甘えていいって言ってくれたじゃないか。
それに君がそんな、美味しそうな唇してるせいもあるんだけど?」
「美味しそう、って。確かにあれ、甘いけどさあ」
美味しいかなあ?とか呟いて、不服そうに眉を寄せたのがかわいくて。
たまらなくなって、抱きしめて閉じ込めた細い肩に額を擦り寄せた。
「君の唇だから、そう見えるんだ」
「チアキのそのね、キスしたくなっちゃうのぜんぶ私のせい、
みたいに言うやつ。よくないと思います!」
「なんで敬語……はあ、ほんとかわいいな」
「ちょっともう、さっきからくすぐったい」
ぐりぐりと額を擦り付けたら、くすぐったがった彼女がゆるく俺の袖を引く。
……やっぱり、無意識に俺を誘うようなことをする君のせいだと思う。
俺の腹の底の欲望が底なしなせいも、もちろんあるけど。
ちゅ、と花と果物の混じった香りのうなじに唇を落としながら、
今夜はどう彼女を堪能しようかって、もうそれしか考えられなかった。